日本有数の大企業のトップがスキャンダルで辞任するのは、そうそうあることではありません。よくあるのは不正会計や不倫スキャンダル、あるいは古典的な脱税事件。しかし今回はちょっと違います。サントリーのトップ、新波剛史(にいなみ・たけし)CEOが辞任に追い込まれたのは、海外から送られてきた“怪しいサプリ”。そう、あのサントリーのCEOがTHC疑惑で“アウト”になったのです。
ウイスキーの帝王がつまずいたのは大麻(THC入り疑惑のサプリ)でした。本人は「CBDだと思った」と主張。しかし、日本中が笑うしかない皮肉な見出しが並ぶことに──酒はテレビCMでも堂々と宣伝され、コンビニでも自販機でも気軽に買える一方、大麻は逮捕・実刑。酒の帝王が“草”でつまずいたのです。
“ハイ”にならない高すぎる代償
2025年9月1日、警視庁が新波氏の自宅を家宅捜索し、輸入サプリにTHCが含まれている可能性があるとして事情聴取。その後、新波氏は辞任を表明しました。違法薬物は発見されませんでしたが、サントリーは「合法・非合法の区別がつかないリーダーには任せられない」として即座に更迭。
日本では事実以上に「見た目(印象)」が重視されます。たとえ起訴されなくても“イメージ失墜”は致命的。ジムビームやメーカーズマークを抱える世界的酒類帝国のトップが“大麻疑惑”で取り調べ──まるでミシュランシェフがカップラーメンで炎上するようなものです。
日本を覆う“緑の壁”
冷静に考えると、日本の大麻規制は世界でもかなり厳格。1948年に制定された大麻取締法では、所持や栽培で最長7年の懲役です。
そう、“ただの植物”で7年。

一方で酒は文化の一部。居酒屋での乾杯は仕事の延長、選挙活動での日本酒も当たり前。コンビニには強烈なチューハイがズラリ。酔いつぶれて駅のホームでサラリーマンが寝転がっていても誰も驚かない。それが日本の「普通の金曜夜」です。
極端な話、日本には「子どもビール」まであります。もちろんノンアルですが、見た目は完全にビール。家族で乾杯!と盛り上がれるようにパッケージされている。酒はここまで日常的に受け入れられているのです。大麻とは雲泥の差。
CBD(THCを含まないもの)は少しずつ市場を拡大し、2023年には医療用大麻の一部解禁もありましたが、娯楽用は完全にアウト。酒のオールインクルーシブ飲み放題がある一方、大麻は完全NG。このコントラストこそ“皮肉の極み”です。
酒より先にあった麻の歴史

実は大麻は日本の伝統に根付いていました。農家が栽培し、神道の神事にも使われ、相撲の横綱のしめ縄も麻が象徴でした。
それを変えたのが戦後のアメリカ占領下。1948年の大麻取締法はアメリカの影響を強く受け、当時発展していた石油化学産業にとって麻はナイロンやポリエステルのライバル。こうして大麻は排除され、合成繊維と酒産業が栄えることに。
つまり、酒産業が栄えた背景には「麻の禁止」があったわけです。そんな中、酒の帝王が大麻サプリで転倒する──因果応報とすら思えてきます。
酒vs草:続くダブルスタンダード
率直に言えば、酒も決して無害ではありません。飲酒運転、暴力沙汰、肝疾患…問題は山ほどあるのに、誰もコンビニでストロングゼロを買っただけで職を失ったりはしません。

一方、大麻は「ゼロ容認」。医療や産業用の区別もなく、とにかく逮捕・前科・人生終了。
これは日本だけでなく、世界中で酒産業が大麻規制にロビー活動してきた歴史も影響しています。人々が「金曜はウイスキー」から「土曜はジョイント」へと切り替えたら、損をするのは誰か。答えは明白です。
だからこそ、酒の巨人が大麻でつまずくのは“笑えない皮肉”なのです。
なぜ重要か
「また企業スキャンダルか」で片付けるのは簡単。でもこの事件は、日本社会が大麻をどう扱っているかを映す鏡です。伝統や神事で麻を使ってきた国が、いまやCBDはOKでもTHCは厳罰。
一方、酒は国民的文化として君臨し続けています。けれど本当に安全なのはどちらなのか? 禁止は需要を消しません。むしろ偏見・誤解・闇市場を生むだけです。もし本当に国民を守るつもりなら、どの物質を規制すべきで、どれを緩和すべきかを見直す必要があるでしょう。
最後の乾杯
結局、サントリーの“ウイスキー王”が失脚した理由は酒ではなく、かつて日本の土に根ざしていた植物。
滑稽で、詩的で、ちょっと笑える。
でも同時に、私たちに問いかけています。なぜ二日酔いは許されて、大麻の“ハイ”は犯罪なのか。なぜ神道では清めに使えた麻が、現代では刑務所行きなのか。
とりあえず今は、ウイスキーで乾杯するのもいいでしょう。でもその隣で“緑の象”の存在についても語り続けるべきです。それから、私のお気に入りのオルタノイドショップもチェックしてみてね♡
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